平成30年6月14日
公正取引委員会事務総局
中部事務所
はじめに
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。
中部事務所においても,転嫁拒否行為等に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,中部事務所管内(富山県,石川県,岐阜県,静岡県,愛知県及び三重県)において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,平成29年度における管内の取組状況は以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 措置件数
管内においては,平成29年度は,転嫁拒否行為に対して,35件の指導を行っている。主な指導の概要は別紙のとおりである。
年 度 | 平成29年度 | 平成28年度 | 累計(注) | ||||
全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | ||
措 置 | 指 導 | 370 | 35 | 362 | 49 | 2,121 | 281 |
《16》 | 《2》 | 《20》 | 《3》 | 《140》 | 《15》 | ||
勧 告 | 5 | 0 | 6 | 2 | 43 | 5 | |
《1》 | 《0》 | 《0》 | 《0》 | 《8》 | 《0》 | ||
合計 | 375 | 35 | 368 | 51 | 2,164 | 286 | |
《17》 | 《2》 | 《20》 | 《3》 | 《148》 | 《15》 | ||
違反事実なし | 149 | 7 | 218 | 14 | 1,299 | 141 |
(注) 累計の数値は,平成25年10月から平成30年3月までの累計。また,全国の件数には,中部地区の件数を含む(以下同じ。)。
《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導の件数で内数である。
2 措置件数の業種別内訳
平成29年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置を採った特定事業者(注1)の業種別で分類すると,管内においては,製造業が9件(25.7%)と最も多く,建設業5件(14.3%)がこれに続いている。
(注1) 特定事業者とは,①大規模小売事業者,②特定供給事業者(注2)から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者である。
(注2) 特定供給事業者とは,①大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者,②資本金等の額が3億円以下である事業者,個人事業者等である。
業種 | 平成29年度 | 平成28年度 | 累計(注1) | |||
全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | |
建設業 | 54(14.4) | 5(14.3) | 56(15.2) | 14(27.5) | 240(11.1) | 48(16.8) |
製造業 | 84(22.4) | 9(25.7) | 66(17.9) | 12(23.5) | 554(25.6) | 104(36.4) |
情報通信業 | 43(11.5) | 4(11.4) | 38(10.3) | 2( 3.9) | 198( 9.1) | 14( 4.9) |
運輸業 | 12( 3.2) | 0( 0.0) | 15( 4.1) | 2( 3.9) | 131( 6.1) | 18( 6.3) |
卸売業 | 28( 7.5) | 3( 8.6) | 20( 5.4) | 3( 5.9) | 157( 7.3) | 14( 4.9) |
小売業 | 30( 8.0) | 4(11.4) | 39(10.6) | 5( 9.8) | 245(11.3) | 34(11.9) |
不動産業 | 23( 6.1) | 2( 5.7) | 19( 5.2) | 1( 2.0) | 92( 4.3) | 7( 2.4) |
技術サービス業 | 15( 4.0) | 0( 0.0) | 15( 4.1) | 1( 2.0) | 114( 5.3) | 6( 2.1) |
学校教育・教育支援業 | 10( 2.7) | 1( 2.9) | 20( 5.4) | 0( 0.0) | 50( 2.3) | 5( 1.7) |
その他 | 76(20.3) | 7(20.0) | 80(21.7) | 11(21.6) | 383(17.7) | 36(12.6) |
合計 | 375(100) | 35(100) | 368(100) | 51(100) | 2,164(100) | 286(100) |
(注1) 累計の数値は,平成25年10月から平成30年3月までの累計。
(注2) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主たる業種により分類している。「その他」は娯楽業,医療福祉,事業サービス業(ビルメンテナンス業・警備業等)等である。
(注3) ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
3 措置件数の行為類型別内訳
平成29年度の措置件数について行為類型別で分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が31件(88.6%)と最も多い。
行為類型 | 平成29年度 | 平成28年度 | 累計(注1) | |||
全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | |
減額 | 36( 9.0) | 4(11.4) | 19(4.9) | 2( 3.8) | 109(4.9) | 13( 4.5) |
買いたたき | 363(90.8) | 31(88.6) | 362(94.3) | 50(94.3) | 1,836(81.9) | 253(86.6) |
役務利用・利益提供の要請 | 0( 0.0) | 0( 0.0) | 0( 0.0) | 0( 0.0) | 49( 2.2) | 5( 1.7) |
本体価格での交渉の拒否 | 1( 0.3) | 0( 0.0) | 3( 0.8) | 1( 1.9) | 249(11.1) | 21( 7.2) |
合計 | 400(100) | 35(100) | 384(100) | 53(100) | 2,243(100) | 292(100) |
(注1) 累計の数値は,平成25年10月から平成30年3月までの累計。
(注2) 1件の事件において複数の違反行為類型について勧告又は指導を行っている場合があるため,違反行為の類型別件数の合計と表1及び表2に記載の措置件数とは一致しない。
(注3) ( )の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
4 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
管内においては,平成29年度は,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,特定事業者34名から,特定供給事業者458名に対し,総額3956万円の原状回復が行われた。
年 度 | 平成29年度 | 平成28年度 | 累計 | |||
全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | |
原状回復を行った 特定事業者数 |
357名 | 34名 | 293名 | 48名 | 1,211名 | 148名 |
原状回復を受けた 特定供給事業者数 |
21,698名 | 458名 | 36,137名 | 1,478名 | 115,988名 | 2,707名 |
原状回復額 | 8億1008万円 | 3956万円 | 9億2957万円 | 1億1267万円 | 28億2564万円 | 2億1178万円 |
(注1) 累計の数値は,平成26年4月から平成30年3月までの累計。
(注2) 各期間の原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
5 転嫁拒否行為等に関する相談件数
転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,管内においては,平成29年度は22件の相談に対応した。
平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 392 | 444 | 548 | 1,420 | 3,179 | 5,983 |
中部地区 | 22 | 19 | 27 | 78 | 87 | 233 |
(注) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談件数並びに情報提供件数を含む。
6 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内においては,平成29年度は85名の事業者及び80の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
事業者 | 事業者団体 | |||
全国 | 中部地区 | 全国 | 中部地区 | |
平成29年度 | 1,009 | 85 | 346 | 80 |
平成28年度 | 2,385 | 91 | 581 | 245 |
平成27年度 | 4,344 | 111 | 682 | 347 |
平成26年度 | 8,744 | 126 | 1,263 | 246 |
平成25年度 | 1,326 | 142 | 401 | 4 |
累計 | 17,808 | 555 | 3,273 | 922 |
7 移動相談会
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,平成29年度は移動相談会を4回実施した。
平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 43 | 36 | 52 | 47 | 75 | 253 |
中部地区 | 4 | 3 | 6 | 3 | 3 | 19 |
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 公正取引委員会主催説明会
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を実施しており,管内においては,平成29年度に4回実施した。
平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 42 | 36 | 51 | 30 | 40 | 199 |
中部地区 | 4 | 3 | 6 | 2 | 4 | 19 |
2 講師派遣
商工会議所,商工会,事業者団体等が開催する説明会等に,公正取引委員会事務総局の職員を講師として派遣しており,管内においては,平成29年度に3回派遣した。
平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 15 | 73 | 27 | 59 | 384 | 558 |
中部地区 | 3 | 53 | 3 | 5 | 52 | 116 |
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出を受け付けているところ,管内において,平成29年度は転嫁カルテル5件の届出を受理した。
また,届出書の記載方法等に関する相談を受け付けているところ,平成29年度はなかった。
なお,平成30年3月末までに,管内において,転嫁カルテル39件,表示カルテル9件の合計48件の届出を受理し,このほか,届出書の記載方法等に関して,20件の相談に対応した。
別紙
主な指導事例(平成29年4月~平成30年3月)
1 減額(第3条第1号前段)
[1] ビルメンテナンス業を営むA社は,自社が使用する事務所の賃貸人(特定供給事業者)に対し,あらかじめ本体価格で定めた賃料について,対価を支払う際に消費税率の引上げ分相当額を減じて支払っていた。
[2] 広告代理業を営むB社は,広告主に対する営業業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,委託代金を本体価格で合意しているところ,消費税相当額を減じて支払っていた。
2 買いたたき(第3条第1号後段)
[1] 金属加工業を営むC社は,自社の従業員に使用させる駐車場の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。。
[2] 大工工事業を営むD社は,廃棄物処理業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[3] 生コンクリートの製造販売業を営むE社は,法律に関する指導業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた
[4] 放送業を営むF社は,テレビ番組の司会業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[5] G農業協同組合は,税務に関する指導業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[6] エクステリア資材の販売業を営むH社は,エクステリア資材の運送業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[7] 冠婚葬祭業を営むI社は,披露宴等の司会進行又は着付けに係る業務を委託しているそれぞれの事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[8] 大規模小売事業者であり,総合スーパーを営むJ社は,自社が運営する店舗において,レジ業務従事者の派遣業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[9] 療術業を営むK社は,ヨガ教室の講師業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[10] 飲食店を営むL社は,自社が運営する店舗及び店舗駐車場の賃貸人のうち,消費税を含む額で賃料を契約している賃貸人(特定供給事業者)に対し,賃貸人から消費税率引上げ分を上乗せするよう要請がなかったことを理由として,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
関連ファイル
(印刷用)(平成30年6月14日)平成29年度における中部地区の消費税転嫁対策の取組について(PDF:120KB)
問い合わせ先
問い合わせ先 公正取引委員会事務総局中部事務所
消費税転嫁対策調査室 電話052-961-9493(直通)(第1関係)
経済取引指導官 電話052-961-9422(直通)(第2及び第3関係)
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